第二章 探偵部

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      -1- 黄昏時のとある教室。 優を初めとする5人の仲間が集まって話していた。 「校則、見た?」 咲が鬱陶しそうに問い掛ける。 それに皆はため息で応えた。 「中学ん時にはなかったのにさぁ、何で高校で校則が付け加えられてるかな」 彰が面倒臭そうに机に突っ伏すと、菜々は困った様に微笑った。 高校には、部活動についてこんな校則があった。 【校則第26条:生徒は全員少なくとも一つの部活動に所属しなければならない。】 これが一つあるがために、この5人は苦悩していた。 皆一様に興味を惹かれる部活がないのである。 考えれば考えるほど、入部よりもむしろこの5人で新たな部活を造ってしまう方向に思考が流れていく。 いつの間にやら、話の本題はどんな部を造るか、という議題にすり変わっていった。 「神経衰弱部はどうよ?」 彰は自慢の記憶力を活かした案を自慢気に披露する。が、 「意味分かんないし、やりたいなら一人でやってろ」 純の手酷い却下にあえなく撃沈した。 「酷い!一人神経衰弱がどんなに寂しいか、お前には分かんないだろ。むしろ激しくカワイソウな奴じゃん!」 「分からないし、分かろうとも思えないね。そういえば、前に楽しそうに一人神経衰弱やってなかったか?」 「…えぇー…純がさんざん馬鹿にして蔑んだんじゃん!忘れたのかコノヤロウ」 「ああ、そうだっけ。まあ、いずれにせよ良いんじゃない、一人神経衰弱。彰だし、何でもありだよ」 また始まった、と呆れる三人を横目に彰と純の不毛な言い争い、改めじゃれあいは、優の一言でピタリと止まった。 「じゃあさ、こんなのはどうかな。Club of Detective──つまり、"探偵部"っていうの」 「……"探偵部"?」 「そう、部活として探偵の真似事をするの。推理ゲームをしたりだとか、誰かの依頼を受けたりだとか」 しん、と一瞬の静寂が降りる。 次の瞬間にはもう賛成の声しか聞こえなかった。 「良いね良いね!大賛成♪」 「何それ、面白そうじゃん!」 「楽しめそうだね。賛成に一票!」 「……まあ、良いんじゃない?否定の要素はなさそうだし」 全員一致。 エリート校におけるエリート5人は、早速作戦のための談義に移った。 こうなったら、もう彼らは誰にも止められない。 標的は──我らが担任、滝沢拓人。
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