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「で、お前たちは新しい部活を造ろうとしているんだな。
それで、顧問を探していると」
職員室の一角で、滝沢は5人の生徒に囲まれていた。
「はい、おっしゃる通りです」
「で、だ。どうして僕なんだい?
他にもっと力になってくれる先生方がたくさんいるんじゃないかい?」
大儀そうに問い掛ける滝沢に、今度は純が冷静沈着に答えた。
「先生もご存じの通り、我が高校の校則第26条には生徒に対して部活動の所属の義務が書かれています。
そして、同26条にはこうも付け加えられています。"なお、教員に関しても同義務を科す"、と。
さて、その中で先生は私どもが調べましたところ、未だ所属先が決まってないただ一人のようですね。
確か、所属決めは今月末までとされていますが、先生には何かご希望の部活動はあるのでしょうか?
浅からず推察しますと、十分時間があったのに動かれていないのは、先生にとって惹かれる部活動がなかったのではないでしょうか。
ならば、私どもが立ち上げた部活の顧問になって、校則の義務を果たしては如何かと存じ上げたのです。
そして何故滝沢先生でなければならないのかと申しますと、この部活の主意に一番添っているのが滝沢先生だと判断したからです。
先生ならば、馬鹿にせず真剣に向き合って頂ける、という偏見に則った判断ではございますが、私どもは先生に期待を持っているのです」
純の饒舌かつ恐ろしく丁寧な演説は滝沢を始め皆を圧倒した。
黙り込んでしまった滝沢に、純はニッコリと笑いかけた。
「如何でしょうか、先生?」
滝沢はそれでも思案するように黙っている。
そして探るように5人の顔を窺うと、はぁ、とため息をついた。
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