第一章 曲がり者の集結

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「……そんな所で突っ立ってないで座ったら?」 愛想もない言葉を青木純(アオキジュン)は冷めた様子で言う。 言われた本人はそれに苦笑で答え、自分の席に荷物を置いた。 「皆本当に相変わらずね。ここまでクラスが皆一緒だと、これは運命なのかもね」 悪戯っぽく笑う優の気障な言葉はしかし、彼女が発する事によって、何らかの不思議な共有をもたらす。 彼女はそんな存在だった。 しばらくは5人で他愛ない話で盛り上がる。 それが中断されたのは、チャイムと共に流れた放送のためだった。 新入生の入学式のための集合についてだった。 場所は一階にある多目的ホールらしい。 5人は半ば大儀そうに立ち上がり、集合場所へと向かった。 多目的ホールにはそんなに多くない新入生達が集まった。 総勢しても、100人にも満たないであろうか。 彼等は一様に緊張した面持ちで、無駄話する輩も少ない。 ここでは入学式の手順について大まかに説明され、それぞれのクラスで出席番号順に並ばされた。 10分もすると、校庭を横切って体育館へと向かった。 新入生入場を行い、単調で退屈な入学式は順調に進む。 そして担任教師の紹介が始まった。 優達のクラス、1年A組の担任は滝沢拓人(タキザワタクト)という若々しい教師だった。 途端に辺りにどよめきが起こる。 滝沢は本当に若かったのだ。 未成年と言っても通用するのではないかという若さだ。 落ち着きがあるため多少大人っぽく見えるが、まだまだ社会人という程ではない。 困ったような苦笑も一層幼さを増させる。 この有名校の教師としては異例とも異質とも言える、若さだった。 しかし、どよめきはすぐに収まった。 ここはさすが笹原生とでもいうべきであろうか。 来賓、保護者のいる事をきちんと弁えている。 A組の副担任は小谷浩一郎(オタニコウイチロウ)という、40代の男だった。 どこにでもいそうな、優しそうな人だ。 しかしその眼はどこか鋭さが感じられる。 彼は滝沢と比較して、あまり目立たない雰囲気のため、あまり生徒の興味は引かれなかった。 しかし、小谷が紹介を受けた時、優が俄に面白そうに微笑んだ事は誰も気が付かない。 その後、入学式は特別な出来事もなく順調に終わった。       * 入学式後の教室は、やはり滝沢の話題で持ちきりだった。 若い上に、顔良し。 薄い色素の髪と瞳に、優し気に整った容貌は主に女生徒の心を躍らせた。 話題に上らない訳がなかった。
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