絶望

5/12
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
「あたいの爪は、相手の心を引き裂く魔性の爪…。一度、この爪に掻かれ、快楽の痛みを知った者は、みんなこの爪の虜になるのよ。」 俺には見えなかったが、あの女の周りに倒れている下っぱたちは、みんな苦痛の顔ではなく、まるでマタタビでも嗅いだようにふぬけになっていた。 女のもとに、さんまが歩み寄る。顔から察するに、相当怒っているようだ。 「たら!!貴様、ボスに散々目をかけられてたというのに、恩を仇で返す気か!!」 すると、その女(たら)は、さんまを鋭い目付きで睨んだ。 「ふん…あたいはあんたらに、何の恩義も感じてないよ!女を散々食い物にしてきたくせに…。それだけじゃないよ…あんたとぶらっくばすは……。」 そう言うと、たらの目に大粒の涙が浮かんだ。 「あんたらは…あいつを…。」 たらはプルプルと震えていた。 さんまは、その様子を見て、ケタケタと笑った。 「ハッハッハ…!そうか、お前はまだあれを引きずっていたのか!女々しいという言葉は、このためにあるんだな!!」 それを聞いたたらは、怒りでさらに震えた。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!