雲影

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雲影

  大音量で音楽をかけ、ドンドンと振動させながら田舎道を走行していた。 これが都会の道であれば、歩いている人々はちらりとこちらを見るだろう。 だがここは田舎なだけあって、人一人すら歩いていない。 人目を気にせず、こうして好きな音楽を大音量で聞きながら運転できるのは、俺にとっては好都合。 流れてくる曲を口ずさみながら次々と道路を越えていった。 今日は快晴。 太陽も丁度運転席の後ろ側にあるため、眩しさも感じず運転できた。 ただ、橋と道路をつなぐ金属にタイヤがあたり、ガタガタと揺れるのはいつもいただけないのだが、こうも運転日和だとその揺れも楽しくなってしまう。 それほど、俺の機嫌は良好だ。 橋を越え、ある程度走り続けていると、ふと目の前の道路が暗みを帯びた。 影だ。 その影は俺の走る前の道路を点々と移動しながら、まるで追い駆けっこを楽しんでいるような気さえするほど、いい具合にできている。 俺はいつの間にかアクセルをおもいっきり踏み込んだ。 ぐんぐんと上がるスピード。 その道は50キロ規制なのだが、今は80キロにも到達していた。 それでも気にせず走り続ける。 とうとう、100キロも出してしまった。
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