月影

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月影

  今日は帰りが遅くなってしまった。 と言うのも、遊ぶことに夢中になりすぎてしまい、気付いたら7時を回っていただけなのだが、門限が厳しい私の家庭では、7時に帰宅するとこっぴどく説教をされる。 私は内心びくびくしながら、自転車を漕いでいた。 私の家は町から4キロ近く離れている田舎である。 そのため、町から1キロ離れてしまうと、街灯もちらほらとしかなく、夜のこの道は怖くて仕方がない。 しかも変質者がでるというオプション付き。 私は臆病者なため、今も心臓をドキドキとさせながら自転車をおもいっきり漕いでいる。 嗚呼、早く家に着きたい。 そんな思いで一心だ。 自転車のチェーンがカラカラという小さな音さえ響いてしまう。 今は車さえこの道を通っていない。 益々心細くてしょうがない。 山が風でざわざわと騒ぎだす。 暗さに慣れた目で木々を見ると、まるでそれらは私を笑っているかのような錯覚さえ見える。 自転車を必死に漕いで走っているというのに、冷や汗しか出てこない。 まるでホラー映画の被害者になった気分だ。 こんな気分を味わうのなら、早く帰ればよかったと後悔した。
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