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親友が世間的には死んだ事になってから六年がたつ。
初夏、午前の陽射しが閉まったままの雨戸で殆んど遮られわずかに一筋の光がデスクの端に置かれたままの冷めたコーヒーカップの温度を徐々に上げていた
礼二はリビングにいるらしく整髪スプレーの噴射音が聞こえる、髪を整えながら鼻歌がだんだん大きくなってきた所で俺は煙草を口にくわえたまま腰を起こしてリビングに向かった
「兄貴、起きてたんだ?」
洗い場の流しに煙草の灰を落とし、冷蔵庫を開け水の入ったペットボトルを出した時ようやく鼻歌がやみ礼二がそう言った
バリンッ
弟の言葉に答える変わりに俺は流しにあるグラスを投げていた
礼二は無表情のまま眉をぴくっと上げて足もとのグラスの破片を拾う格好をしながら言った
「まだ昨日の事怒ってんだ?」
少し深く息を吸って俺は今日初めて口を開く
「怒ってないとでも思ってんのか?」
昨日の礼二の奇行がまだ理解出来ずに苛立ち、二本目の煙草に火をつけ俺はまだ納得のできないという顔を露にした。
礼二に苛ついている理由は正確には二つあり、ひとつ目は俺の金を使い込んだ事、二つ目は重要な事を今まで黙っていた事にある
金といっりの大金で普通なら俺と同世代の定職に就いている二十代の多くが滅多に稼ぐ事の出来ない大金である、およそ二千万、それを1日で使い、なおかつ俺の親友の生存を二年もの間ひた隠し昨夜ビールを片手に笑ながら話すと言った行動に腹を立てるのは当然だ馬鹿野郎。
「馬鹿野郎。」
下を向いたまま声に出していた事に気づいてもう一度礼二の方を見ると既に割れたグラスを綺麗に片付け窓際のソファーにくつろぎこちらを見ていたツンツン頭は整髪スプレーを片手でポンポンと投げたりキャッチしたりしていた。
「兄貴、取り敢えず座りなよ、全部初めからちゃんと話すから。」
パンキッシュなファッションに不釣り合いな丸い眼鏡を掛けた弟はそう言って少し表情を明るくした。俺は斜め向かいの一人掛けのソファーにドスッと腰を下ろし、何も言わず顎でさぁ話せと促した。
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