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礼二は静かに話始めた、高校最後の思い出に金を貯めてロシアに一人旅に行った時の事を
もちろん一度話を遮ってその話が関係あるのかと確認し、令二の返事を聞いてから再び顎を突きだした
俺は礼二がロシアに行った目的がコンサート観賞だと知っていた、弟はあるパンクバンドに強烈にのめり込んでいる、ファンになってから既に五年は経過してるだろう、俺は何度も興奮した弟の長話でそのバンドの事を其処らのにわかファンよりはある程度知っていた、が、いかんせんパンクのくせにメンバーは全員ムキムキでサンボという格闘技と両立し反逆の音楽をかきならすという訳の分からないバンドを俺は好きになれなかった。
礼二が一人旅の話から話始めたところで話が長くなる事を悟り、成るべく弟の興奮をかき消すような相づちを考えながら俺は口を開いたがつい真逆の事を言ってしまった。
「メンバーの楽屋に入れたんだろ?」
「そう!その時なんだ!」
既に目が十代に戻っている礼二は明らかに興奮していて俺はまた苛つき始めたが次に礼二の口から出た言葉に身を乗り出した。
「清人さんが其処にいたんだよ」
「何だって?」
「だからその時清人さんの生存?を知ったんだよ」
「まじか。」
「まじさ。」
ここで清人の名前が出てくるとは思わず驚く俺に構わず礼二の話は淡々と続く、俺は口を挟まず素直に聞いていた。昨日の夜に礼二が清人の名を口にした時とは違い、昼下がりの雰囲気もあってか頭の片隅ではぼんやりと清人との昔の記憶が蘇ってきていた。
だが穏やかな気持ちになる訳でもなかった、 なぜなら俺の中の清人の記憶で一番鮮明なのが彼の事故死なのだから。
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