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最近彼女の周りをちょこまかと動き回っている一年の話は聞いた事がある。
後輩の中では、秋良はかなり人気があった。
それは男女関係なく。
コイツにはどこか人を惹き付ける何かがあるのか、と。
そしてまた、自分もこうして彼女に惹かれた人間の一人だった。
「それにしてもまぁ、名前書いてないのは困るンだよねー……」
「つーかそんなたくさんもらって食いきれんのか?」
「アタシの胃袋は鉄さ!」
意味わかんねぇよと秋良を小突く。とりあえずまぁ、安心はしていた。
いつか彼女に貰えたら、なんて浅はかな望みは叶うだろうか。
直也は自虐的に笑う。
「あ、食う?」
「ん?」
ひょい、と差し出されたお菓子。
中にチョコレートが入っている、甘いお菓子。
「……サンキュー」
先生に無理矢理連れていかれる創を見ながら、秋良からもらった菓子を口に放り込んだ。
『好きな人からもらったチョコは格別』
と言った秋良の台詞が頭の中でリピートされる。
まぁこんなバレンタインもありかな。
と、直也は菓子を箱ごと強奪した。
「もーらい」
「だぁぁぁ! ふざっけんなこの馬鹿が返せアタシの昼飯ぃぃ!」
「昼飯なのかよ!」
どんなチョコレートよりも、君のチョコが一番欲しいから。
たとえそれが、奪ったモノだとしても。
ホントは顔を赤らめて、恥ずかしそうに渡してもらいたかったケド。
アン☆ハッピーバレンタイン
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