アン☆ハッピーバレンタイン

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教室に着くなり漂う甘い香りが二人の鼻をついた。 いつもなら、まだこの時間帯には居ない筈の女子達が、キャイキャイ騒ぎながら教室の隅で群がっている。 鞄を机に置くと、重たい腰を下ろした。 続いて後ろに引っ付いていた奴が直也の隣に腰掛ける。 そして足を放り出し、にこやかにこう言うのだ。 「うっわ直也くんモテモテー」 「……うるさいぞ創、人の事言えないだろ」 創と呼ばれた長身の男子は、椅子を正規の方とは反対側にまたがりヘラヘラと笑みを浮かべる。 直也の机の中にあった、チョコレートを発見したのだ。 そしてまた、創の机の上にもう一つ。 「誰?」 「無記名」 その箱のどこを見ようが名前が見当たらない。 机の隅にソレを置くと漫画を数冊、込み合った鞄の中から取り出した。 「昨日どこまで貸したっけ?」 「んーと、多分13巻」 「じゃあ今日は5冊な」 直也が創に手渡したのは、近頃このクラスで流行っている漫画だ。 漫画5冊を読みきるのにそう時間はかからないが、この人達にとっては少ない量だった。 以前創が少ないと文句を言ったが、持ってくるのが重い、と一掃されてしまい結局この5冊という分量に収まった。 だがしかし、 「あー……今日は3冊にしとく」 「なんで」 創の鞄の中にも、直也と同じく甘い物がたくさん詰められていた。
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