48人が本棚に入れています
本棚に追加
教室に着くなり漂う甘い香りが二人の鼻をついた。
いつもなら、まだこの時間帯には居ない筈の女子達が、キャイキャイ騒ぎながら教室の隅で群がっている。
鞄を机に置くと、重たい腰を下ろした。
続いて後ろに引っ付いていた奴が直也の隣に腰掛ける。
そして足を放り出し、にこやかにこう言うのだ。
「うっわ直也くんモテモテー」
「……うるさいぞ創、人の事言えないだろ」
創と呼ばれた長身の男子は、椅子を正規の方とは反対側にまたがりヘラヘラと笑みを浮かべる。
直也の机の中にあった、チョコレートを発見したのだ。
そしてまた、創の机の上にもう一つ。
「誰?」
「無記名」
その箱のどこを見ようが名前が見当たらない。
机の隅にソレを置くと漫画を数冊、込み合った鞄の中から取り出した。
「昨日どこまで貸したっけ?」
「んーと、多分13巻」
「じゃあ今日は5冊な」
直也が創に手渡したのは、近頃このクラスで流行っている漫画だ。
漫画5冊を読みきるのにそう時間はかからないが、この人達にとっては少ない量だった。
以前創が少ないと文句を言ったが、持ってくるのが重い、と一掃されてしまい結局この5冊という分量に収まった。
だがしかし、
「あー……今日は3冊にしとく」
「なんで」
創の鞄の中にも、直也と同じく甘い物がたくさん詰められていた。
最初のコメントを投稿しよう!