48人が本棚に入れています
本棚に追加
授業の終わりをチャイムが告げた。
号令が終わるなり、創が飛び出し秋良に飛び付こうとしている。
恐らく、あの箱の行方を聞こうとしているのだろう。
しかし直也は焦りはしなかった。
50分、授業丸々一時間かけて辿り着いた答えは“桐生宛の友チョコ”だ。
決して焦ってはいけない、ここで焦ってしまっては自分の気持ちがバレてしまう、と一生懸命焦る気持ちを抑え席を立つ。
「秋良、その「おーい山岸」
創が真相に迫ろうとした直前、先生が彼の名を呼んだ。
「なんですかこんな時にぃ!」
「お前先週の課題未提出だろ」
「…………あ」
先週の課題、というものは物理のプリント3枚で、かなり時間のかかる物だった。
それをやっていなかったという事か……
不本意だが、直也は少し気持ちが軽くなった気がした。
「どーせソレ、桐生にだろ?」
「ご名答!」
やっぱり、とため息をついた。
まさか自分が貰えるなんて期待は最初からしていない。
秋良はそういう人だ。
「やっぱりどんなチョコよりも、好きな人からもらったチョコは格別だね」
ニコニコ笑いながら鞄の中を漁る秋良は、どこか嬉しげにそう言った。
「お前、そんなにどうしたんだよ……」
「んー? 下駄箱ん中に入ってた」
ああそうか、とまたため息をついた。
秋良もまた、女であるにも関わらずモテた。
最初のコメントを投稿しよう!