金曜日の手紙

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麗らかな春の風が頬を撫でて往った 夢か… 子守り歌にしては単調すぎる低い声が私を眠りの国へと誘っている ・・ アレは何を言っているんだろう 濃い緑色の壁に何かを書きなぐりながら喋っているモノを無感情に見つめる とりあえずこの眠気さんに身をまかせよう… 私はそう思い、組んだ腕に顔をうずめ直して深く息を吸う すると、雑巾に近い湿った木のような臭いがした 恐らく、使い古された机に染み込んだ臭いだ この微妙な睡眠妨害に、少し顔をしかめる 『木の良い香り』とはとても言い難い… この穏やかな眠気を妨げる唯一の妨害であった
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