あまりにも小さな物語

2/20
616人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
背中に日差しの温もりを感じた。 私は瞼をゆっくりと開けた。太陽から放たれる光の眩しさのせいで、瞼を完全に開けるまでには時間がかかった。  何とか目を開いて、起き上がった。  ずっと寝ていたせいか、頭の中がふわふわしてはっきりとしなかった。まるで頭に綿菓子が詰まっているかのようだ。 私は寝床の上で座ったままぼーっとしていた。  辺りは不思議なくらいに静かだった。この世から音が消え去ってしまったかのような気持ちになった。 だけど、私にとっては好都合だった。 だって、静かな方が気持ちよく眠れますもの。  頭上から降り注ぐ柔らかな日差しが再び私を眠りへと誘う。 ついさっき半ば無理矢理に開けた瞼が徐々に下がってきた。私は襲ってくる眠気に出会うと同時に白幡を振った。これに対抗する術を私は持っていなかったし、持つ必要もなかった。  寝床に潜り込もうとした瞬間。 耳をつんざくような音が聞こえた。  私は跳び起きた。  耳を塞ぐ間もなく、再び悪魔の声とも呼ぶべき叫び声が聞こえた。 皮膚上に悪寒が走った。眠気もどこかへと吹き飛んでしまった。  悪魔のような声は数分の間辺りに響き渡った。立とうとしても足に力が入らず、数分間、体を丸めていることしかできなかった。  体を縮めていると、その叫び声はぷっつりと途絶えた。  声が聞こえなくなった後も、しばらくは別の意味で寝床に潜り込んでいた。声が完全に消えたことを確認してから、ゆっくりと寝床から這い出した。  体を恐怖が取り巻いた後、激しい怒りが体の底から沸き上がってきた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!