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この声の主は分かっていた。
人はそれを「犬」と呼んでいる。
ポチやらクロやら変な名前を付けて、それは大層可愛がっているらしい。私はそんな人達の気が知れない。
よだれはダラダラ垂らすし、汚らしいし、大きくて恐ろしいし。あんな動物の一体どこが可愛いのか――私は絶対に近寄りたくはない。
そして、その犬とやらに現在進行系で爆発的な怒りを覚えている。
せっかくの安眠を妨害するなんて、飼い主の仕付けはどうなっているんだ。
文句の1つでもぶつけてやりたいけれども、それは無理だし、犬は怖いから諦めよう。
声がしていた方向に私は背を向けた。
ちょっとばかり自分が情けなく感じた。
もう一度寝ようと努めたが、目が覚めてしまい寝付けそうにもなかった。
果てしない空を見上げてみると、太陽が斜め上に見えた。
どうやら、午後らしい。つまり私は午後まで寝ていたということになる。
寝過ごした感じもするが、たいした問題ではない。
私が寝過ごしたところで誰も迷惑はしない。それに自慢じゃないが、私は夜行性だ。
夜に真価を発揮するタイプ。だから、昼間の間に寝て、夜に備えるだけのこと。別に変なことじゃない。
友達にもそんな人が多いもの――これは言い訳じゃないよ。
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