あまりにも小さな物語

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とてつもなく暇なので、散歩に出掛けることにした。 今日は久しぶりに高校にでも行ってみようかな。  外の風は冷たくて、一歩踏み出すのに一瞬躊躇したが、ゆっくりと歩き出した。  歩き始めると足の裏に柔らかな感触を感じて、地面に目を落とした。  アスファルトの上を黄色や赤に色付いた葉っぱがまるでシーツのように覆っていた。秋を実感させるには十分な光景だった。 有り得ないことを可能にするのも秋だ。いつもは無機質な地面が色彩を帯びているのだ。それはえも言われぬ美しさだった。 私に美的感覚というものは備わっていないが、そんな私にもこの光景はただただ綺麗に思えた。  落ち葉の上を歩いていると、向こうから誰かが歩いてきた。2人の女の子だった。 服装と時間から下校中の高校生だということはすぐに分かった。    彼女達はおしゃべりをしていたが、私を視界に捉えるとおしゃべりをやめ、こちらに熱い視線を送ってきた。 その視線があまりにも強烈なので、私は堪らず目を逸らした。  その後も何人かの高校生に出会ったが、みんな一同に私を凝視するのだった。  こんな時間に高校に向かう私がおかしいのだろうか? いや、違う。私が可愛すぎるんだ。可愛すぎるから、みんな熱い視線を送ってくるんだ。きっとそうだ。  私は意味不明な確信を抱いた。 前向き過ぎる考えに自分自身で呆れた。  そう、私はいつだって前向き。少し前のめりになるくらい前向きなのだ。 それくらいの方が人生は上手くいくらしいからね。  だから、私はいつも以上に顎を引いて、必要以上に姿勢よく歩いてみせた。 疲れたので、途中でやめた。
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