あまりにも小さな物語

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大きな建物の間を摺り抜けて右に曲がった所にグラウンドはあった。  グラウンドの周りは緑色の金網で囲まれており、その中では沢山の人が体を動かしていた。  私はスポーツについては無知なので、彼らが何をしているのかは分からなかったが、彼らの服装などからこのグラウンド内の人達はほぼ2種類に分類されていることは分かった。  金網の周りを歩くとグラウンドへの入り口があり、そこから中へと入った。  私のお目当ての彼は北側のスペースで汗を流しているので、他には目もくれずにそちらに向かう。 いつも通り、大きないちょうの木の下に腰を下ろし、彼の姿を探した。  グラウンド上では紅白戦が繰り広げられているらしく、何十人もの人が激しく動いている。私は目を皿のようにしてやっとの思いで彼を探し当てた。  彼は中央で縦横無尽に走り回っていた。 私は、髪を振り乱しながら駆け回る彼の姿を見つめた。  彼のプレーは何度も見たが、何度見ても相変わらず競技のルールはいまいち分からなかった。 とりあえず、ボールを両側に設置してある網に入れればいいらしい。あと、特定の人以外は足しか使ってはいけないらしい。 他にもルールがあるらしいが、知らない。いや、覚える気がないと言った方が正しいかもしれない。
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