あまりにも小さな物語

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実を言うと、私は彼のファンだった。 彼はとても楽しそうにプレーをするし、ボールの扱いがとても上手だった。まるで、ボールが足の一部かのようなのだ。 彼のボール扱いは見ているだけでも楽しい。  私も小さい頃はボール遊びが好きだった。だけど、この歳になるとボール遊びはさすがにやらなくなる。今となってはいい思い出だ。  頭の中で懐かしい思い出を再生していると、笛が高らかに鳴らされた。  グラウンドで動いていた人達が水筒のある方へと歩き始める。どうやら休憩時間になったらしかった。  多くの人が水を飲んでいるなかでも、彼から目を離さなかった。  私は彼に近付いてみようと考えた。  彼に会いに行くのは初めてではなかったけれども、かなり久しいので緊張した。本当なら緊張なんかする相手ではなかったけれども、私の体は固くならずにはいられなかった。  彼の元に歩いて向かうまで、細心の注意を払って歩いた。そうでもしないと、私は足が絡まってしまい上手く歩けそうにもなかった。  おぼつかない足取りで彼の元を目指した。周りから見たら、私の動きは明らかに不審に見えたに違いない。  ある程度近付くと彼は私に気が付いたらしく、水筒を片手に持ったままとびきりの笑顔を顔に浮かべて私の方へと駆け寄ってきた。 彼の無邪気な笑顔を見て、固くなっていた体が一瞬にして溶けてゆく。
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