…―原点―…

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母は静岡県の奥地、佐久間の山の頂上付近で育った。 二男四女の6人兄弟、下から3番目の次女として生まれる。 山に囲まれたその故郷は、ヘリコプターが頭上すぐ近くを飛んで行く様な場所で、学校に通うのにも一苦労。徒歩で片道1時間半は掛かったと、母はよく笑いながら、故郷を懐かしむ様に話していた。 妹の世話や家事を手伝いつつ、昔ながらの温かい家庭で、お茶の段々畑が広がる大自然に囲まれながら、伸び伸びと育っていった。 母が未だ、小学生で低学年の頃、兄が突然、ある病に倒れた。 『腎不全』である。 兄は、瞬く間に弱って行ったと言う。 病に勝てず、兄は亡くなってしまった。未来ある子供だというのに、突然の不幸に母の母親(おばあちゃん)は、悔し涙を流した。 その光景を目の当たりにした母はその時、『悲しませない様にしよう』と心で誓ったと言う。
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