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「兵助ー!」 返事は無かった。 辺りの叫び声に消されたのだろう、司は再び走り出す。 向かう先は野球グラウンド、きっと兵助はそこに。 道中はまるで地獄絵図、いや、地獄が再現されていた。 運良く触手に見つからず野球グラウンドまで来たが、そこは抜け殻だった、人なんか居ない、所々に血と野球用具が散っていた。 司は地面に膝をついた。 (兵助はどうなった、他の野球部の奴等は?だってアイツら甲子園だー!とか言って目茶苦茶頑張って練習してたんじゃねぇの? 嘘だろ、おい…) 「何だよ…これ…!」 「兵助!」 後ろからの声に司は振り返る、そこには練習用のユニフォームに着替えた兵助が立っていた。 司は少し安堵した。 「良かった、早く逃げよう」 「何なんだよ、何で、血かコレ…おい、辰川!木更津!…槙!?」 「変なのが出て来たんだ、皆アイツに食われちまったんだ!」 「食われた…?は、馬鹿言うなよ…返せよ、吐き出せよ!!」 突然起こった事に兵助はただ戸惑っていた。 嘘だと思いたかった、だが血と叫び声が司に現実だと教えた。 司は叫んだ、兵助はそれさえ聞いていない。 「返せよ…畜生…!!」 兵助が球体に向かい駆け出す、司もそれを追う。
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