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夏の朝は不平等にやってくるのに、秋の夕暮れは平等にやってくる。
静かにあの屋根の向こう側に消えゆく夕陽をぼんやり眺めながら、私はそんなどうでもいいことを考えていた。
どうでもいいこと…どうでもいいこと…
どうでもいいことって…何?
どうでもよくないことって…何?
もうすぐ、あの屋根に消え入る夕陽は、そんな私に構わず沈んでゆく。
あの夕陽が完全に消え入ったら、どうなるんだろ?
もちろん、何かどうにかなるわけではないことはわかっている。
でも…また私はそんなどうでもいいことを考えてしまう。
電話が鳴った。
優からだ。
電話を取って「もしもし」と言う。
もしもし…もしもし…もしもし…
「もしもし」って何だろ?
優と電話しながら、私はまたどうでもいいことを考えていた。
「ちょっと!聞いてる?」
「あっ、うん。ごめんごめん。それでそれで?」
「それでさぁ~まったく信じらんないんだけどさぁ~…」
信じらんないこと…
信じらんないことって何?
信じられるものって何?
目に見えるものが信じられるもの?
目に見えないことは信じられないこと?
今、優と話していることは目に見えない…
それって、信じられないこと?
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