3 無口 VS 傲慢 前編

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「ってか……なんで空港のロビーなんだよ。実家で会えば良いじゃん。ソッチの方が断然、命の危険ないし」 「知らない。多分、向こうの、都合」 むむむ。都合?アイツにそんなものはないと信じたい。周りを省(かえり)みない、巻き込み体質のアイツに、都合や用事などあって堪るか! そもそも、空港に来れるほど暇、ってのも有り得ない。絶対に我儘言って強引に来たに決まっている。 「うーん。なんつーか、この仕事……乗り気がしねぇ」 「……そう」 そうです。ええ、全く以(もっ)て乗り気がしません。 いや、この仕事そのものは気に入ってるぜ。災害対策係がASTOMのモットーだし。でも……何で俺がこの地区なんだ! アリスの奴、絶対に知ってて(むしろその為に)此所を担当させてやがる。 「セン、あれ」 「え?何か―――うっわ。何アレ」 ラミールの指差した先には、この俺と同等の異常さを振り撒いている“アイツ”がいた。 白い半袖のシャツに紺色のジーンズ。耳にギリギリかかる短い黒髪に、赤いヘアピンが付いている。 俺等に気付くなり「おーい。こっちこっち~」と大きく手を振って自己表示。止めてくれ、俺等が目立つから。 周りの視線は、さっきから彼女に集中している。中には写メ撮っている奴もいる。 「久しぶり。元気、だった?」 「元気元気。ラミールも相変わらずねっ」 元気っ子アピールの仕草(脇を絞めて頷き)と共に、コチラに走って来る少女。あー、すっげウゼー。 「セントリア、貴方も久しぶりね」 「そーだな。一生会いたくなかったがな」 「えー、そんなー。つーまーんーなーいー」 ウッゼーなオイ。何だ?そういうの今流行ってんのか!? 「いいから、早く本題入ろうぜ」 「ヴー。まー良いですよ。セントリアがサバサバしてんのは、最初に会った時からだからー。我慢してあげますよー」 てめぇ、一回ぶっ殺してやろうか? 「セン、少し、愛想、悪い」 「んなこと良いんだよ。それに“少し”じゃなくて、愛想なんざ0%だよ」 先ず、俺は誰に対しても愛想など有り得ない。今まで、そんな対象に会ったことも、“そんな教育をされた”こともないんだから。 「まぁ良いでしょう。この……アジスタン政府で最年少の構成員にして最高幹部No.11であるヴィルシィ=ノンが、お仕事の手伝いをしてあげます」 年齢は見た目17、8の少女。而してその実態は――― アジスタンの政府の人間なのである。
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