第4回 (2008年6月3日)

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話を戻そうか。   1ヶ月の入院と言っていたのが、3ヶ月、半年と延び、その間にも祖父はだんだんと衰弱していっていた。   今日、1日の仕事を終えて、今朝、母に「祖父が病院を移る」と聞いていた俺は、明日明後日の二連休で見舞いに行こうと思いながら、帰宅の途についた。   家には誰も居らず、テレビを見ながら弁当を食べ終え、いつものように自室のベランダで一服していた時、携帯が鳴った。 画面に映る発信先は弟。 普段めったにメールさえもしてこない弟からの電話。 でもまぁ、たまにはこんな事もあるかと、俺は気楽に通話ボタンを押した。   「もしもし?」 『あ、兄貴!?お母さんから連絡あった!?』 「いや?どうしたん?」 『爺ちゃんが死んだって!!』 「はぁ!?」   小説やら何やらで“絶句”という言葉を使ったり、そういう状況を描写したりは散々やってきた。 だけど、自分が体験するのは初めてだった。   『兄貴今どこ?』 「家やけど」 『わかった!!俺もすぐ帰るけん!!』   電話が切れても、俺は言葉が出なかった。 自然と足は和室の仏壇の前に向かい、座り込んで、ただ茫然と眺めていた。  
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