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どれくらいそうしていたのか、やがて弟が帰ってきた。
バタバタとシャワーを浴びる音が聞こえてくる中、俺はまだベランダで茫然としていた。
しかし、いつまでも茫然としている訳にはいかない。
とりあえず、俺は着替え始めた。
そのうちに、よく知らない親戚が迎えに来て、その車に乗り込み、病院へ急ぐ。
よく知らない山道を走り抜けた。
曲がりくねった山道で、一つ一つ大きく体を揺らされる度、一つ一つ祖父の記憶が蘇ってくる。
よく
(6月4日17時02分)
祖父の納棺が終わり、広島から急ぎ戻った下の弟を迎えに行ってきた。
納棺の時も、悲しいはずなのに、涙の一つも出てこなかった。
病院に駆けつけた時もそうだった。
病院に駆けつけた時も、納棺の時も、上の弟は泣いていた。
だけど、俺は涙も、嗚咽も出てこなかった。
俺は、喜怒哀楽の哀が欠けているのだろうか。
いや、きっと欠けているのだろう。
悲はあるのに、哀がない。
こんな祖父不幸な俺に、この場に居て祖父を見送る資格があるのだろうか。
下の弟を迎えに行く間も、納棺の後、母が俺に弟を迎えに行くよう言ったのも、体よく俺を追い出す為だったのではないだろうかという考えが、頭から離れなかった。
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