第4回 (2008年6月3日)

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(6月5日13時27分) 葬儀が終わり、火葬場に着いた。 棺を納め、祖母は号泣していた。 親族も皆、泣いていた。 だけど、俺は涙が出ない。 何でだ。 祖父の死を、悲しいはずなのに涙が出てこない事が悔やんでいるはずなのに。 祖母に対しても、母に対しても、弟達に対してさえも、慰めの言葉すら出てこない。 何で俺はこんなに無力なんだ。 いたたまれず、俺は今待合室の外、火葬場の玄関に居る。   (6月5日19時35分) 葬儀が全て終わり、祖母の家に祭壇の備え付けも終わり、今日祖母の家に泊まる、宮崎から来てくれた親戚と、酒を酌み交わし、飯を食べている。   「火葬まで済むと、もうある程度諦めがつくよね」というおじさんの言葉通り、祖母ももうだいぶ落ち着いている。 火葬場の窯に棺を納めた時の祖母の取り乱しぶりを見ていた分、本当によかったと思う。 まだ小さかった頃に、祖母達に宮崎まで連れて行ってもらった事があり、俺は断片的に覚えていて、向こうはハッキリと覚えていた。 当時の話なんかを聞いていると、祖父が亡くなってからずっと感じていた無力感を忘れさせてくれる。 正直、ありがたい。 ただ、自分とどういう繋がりになるのかを思い出せず、若干の申し訳なさも感じる。   とりあえず、飲もう。 これからのために、無力感を忘れて、祖父のことを忘れないために。
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