1069人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、目の前にアズという悪魔がいる以上、ユングの存在は否定できまい。
「……けどさ、それっておかしくない?」
人間には人間の、悪魔には悪魔のチャンネルがあって、それは変えることが出来ないのであれば、
「アズは、どうやってこの世界に来たのさ?」
問いに答えるように。
アズは、説明を再開する。
――実界とユングは重なっている以上、同じ座標に存在する。
しかし、世界の力場……テレビで言えば電波にあたるその力がまったく別物であるため、同じ座標にありながら、しかしそれらの世界を同時に認識することができない。
だが、何かしらの不確定的な力が加わることで、ごく稀に実界とユングの力場が一致することがある。
一致した場所は、お互いの世界が交ざり合うことで『穴』となる。
その穴はつまり、お互いの世界を行き来する出入口に他ならない。
実界で騒がれる天使や悪魔、ひいては未確認生命体の目撃例とは、つまりこの穴を通って実界にやってきた存在だ。
「……それはまた、この世界の常識をあっさり覆す話だね」
ちなみにこの段階になると、灯志郎は全ての理論を理解することは放棄していた。
要するに世界がいくつかあって、たまに『穴』によって世界が繋がって、自由に行き来できるんでしょ、と噛み砕いて解釈している。
「……それで、その話と僕を守ることには何の意味があるのさ」
今のところ、あまり自分とは接点のない話に思えるのだが……
しかしアズは、そんな灯志郎の思いとは裏腹の言葉を口にする。
「それが……関係ありまくりなのですよ、トーシロー」
最初のコメントを投稿しよう!