第一章……実界とユングと灯志郎

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しかし、目の前にアズという悪魔がいる以上、ユングの存在は否定できまい。 「……けどさ、それっておかしくない?」 人間には人間の、悪魔には悪魔のチャンネルがあって、それは変えることが出来ないのであれば、 「アズは、どうやってこの世界に来たのさ?」 問いに答えるように。 アズは、説明を再開する。 ――実界とユングは重なっている以上、同じ座標に存在する。 しかし、世界の力場……テレビで言えば電波にあたるその力がまったく別物であるため、同じ座標にありながら、しかしそれらの世界を同時に認識することができない。 だが、何かしらの不確定的な力が加わることで、ごく稀に実界とユングの力場が一致することがある。 一致した場所は、お互いの世界が交ざり合うことで『穴』となる。 その穴はつまり、お互いの世界を行き来する出入口に他ならない。 実界で騒がれる天使や悪魔、ひいては未確認生命体の目撃例とは、つまりこの穴を通って実界にやってきた存在だ。 「……それはまた、この世界の常識をあっさり覆す話だね」 ちなみにこの段階になると、灯志郎は全ての理論を理解することは放棄していた。 要するに世界がいくつかあって、たまに『穴』によって世界が繋がって、自由に行き来できるんでしょ、と噛み砕いて解釈している。 「……それで、その話と僕を守ることには何の意味があるのさ」 今のところ、あまり自分とは接点のない話に思えるのだが…… しかしアズは、そんな灯志郎の思いとは裏腹の言葉を口にする。 「それが……関係ありまくりなのですよ、トーシロー」
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