第一章……実界とユングと灯志郎

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――『穴』が発生した場合、基本的にユングの住民が我先にと実界に押し寄せてくる。 娯楽、悦楽、快楽、享楽を求めて、だ。 実界はユングの住民にとって、使い勝手の良い遊び場に他ならず、彼らは、実に自由気ままに振る舞う。 しかし、ユングの住民にとっての娯楽は様々であり、その中には人間に利益をもたらすものもある。 それ故彼らの行動は、実界の住民からしてみれば善悪に区分化される。 その中でも、実界に被害を及ぼす存在の事を『クローズ』、と呼ぶ。 これは、彼らが実界で力を振るう事により『穴』が閉じるのが早くなる事に起因する名前であり、それ故に穴は長時間開くことは少ない。 それこそが、実界でユングの住民の目撃例が少ない理由なのだが…… 「困ったことにですね……トーシロー、お前が死ぬと……穴が閉じなくなるらしいのです」 「えっ……は?」 完全に他人事というか、素直に話を聞いてしまっていた灯志郎は、アズの不意打ちのような言葉に驚愕の声を洩らした。
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