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「僕が死ぬと穴が閉じないって……なんでさ?」
正直、これっぽっちも現実味が湧かない。
しかしアズは、真剣そのものという表情で。
「さあ……理由は知らないですが……とにかく、そうらしいです」
そんな蒙昧かつ曖昧なことを賜った。
さらにアズは、驚愕の事実を口にする。
――悪魔界の名門、『アナフォーゼ家』は、こう結論した。
仮に夏雨灯志郎が死に至り、穴が閉じなくなったとする。
すると、ユングの住民が我ぞ我ぞと押し寄せてくる。
しかし本来、そのようなことはあってはいけない。
実界にユングの住民がいるというのは、いわば世界の『矛盾』だ。
在ってはならないものがそこに在る、という矛盾は、現時点では大した実害もなく問題視されていない。
しかし、仮に穴が閉じなくなり、ユングの住民が一斉に押し寄せてきたとなれば……世界は、その矛盾を内包できず『崩壊』するのだとか。
「え~と、つまり何?僕が死ぬと、世界が滅びるってワケ?」
そのようなこと、俄かに信じられる話ではない。
「そうです……トーシロー、お前の命は世界と等価です」
しかしアズは、いたって真面目だ。
今日は7月の14日、エイプリルフールでもなければ、『ドッキリ大成功!』なんてプラカードを持った男も現れそうにない。
……いやまあ。現れたら現れたで困りものだが。
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