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――しかし、疑問が残る。
「ねえ、アズ」
自分の命が世界と等しいというのはわかった。
アズが灯志郎を守るというのは、そのことも知らずに、穴を広げるために灯志郎を殺しにくる『クローズ』からということだろう。
しかし、それなら……
「何も僕を守らなくたって、『夏雨灯志郎を殺すと穴が閉じなくなる代わりに世界が滅ぶ』って、皆に呼び掛ければ良いじゃないか」
我ながら名案だ。
灯志郎を殺しにくるというのはつまり、娯楽を求めるクローズ達で、しかし灯志郎の命が世界と等価であることを知らない存在だ。
つまり、『灯志郎の死は世界の死』というのを共通認識にしてしまえば、わざわざ自分が守ってもらわなくても良いのだ。
しかしその天才的ヒラメキ(灯志郎主観)は、アズの半ば侮蔑の域にすら達する呆れの言葉で一蹴されてしまった。
「ハァ……意外と、頭悪いですねトーシロー……ノータリンです」
「ひどっ!ノータリンって、あんまりじゃない!?」
微妙にセンスが古いのも、何かこう、言い様のないダメージを与えてくる。
「トーシロー、よく聞くです……」
ふぅ、とため息を吐きながらも、説明する気満々なアズ。
……その、何というか。子供が背伸びしているようで、妙に可愛らしい。
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