第一章……実界とユングと灯志郎

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しかし。そんな微笑ましさとは裏腹に、真剣な表情で説明するアズ。 ――確かに。 確かに、灯志郎の言うようにした方が効率はいい。 灯志郎本人を守るよりも、そも、灯志郎が狙われなければ良いのだから。 ――それが実現できれば、だが。 夏雨灯志郎の死は世界の死と等しいという定義を、全ユングの共通認識とする。 ……つまり、それは。 全ユング同士が、コミュニケーションを取れることを前提とした話だ。 「……あ」 愚かにも。ようやく、自分の提案が不可能であることを悟る灯志郎。 ――そうだ、さっきアズが言っていたばかりじゃないか。 この世界の在り方は、テレビに等しく。 基本的に、そのチャンネルは変えることができない……つまり、お互いの世界を自由に行き来するなど、できはしないのだ。 「それに、実は……現在、いくつのユングが存在しているのか……それすらも、わからないです」 そんな状態で、全ユングに共通認識を作るなど、不可能と言わずしてなんと言おうか。
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