1069人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし。そんな微笑ましさとは裏腹に、真剣な表情で説明するアズ。
――確かに。
確かに、灯志郎の言うようにした方が効率はいい。
灯志郎本人を守るよりも、そも、灯志郎が狙われなければ良いのだから。
――それが実現できれば、だが。
夏雨灯志郎の死は世界の死と等しいという定義を、全ユングの共通認識とする。
……つまり、それは。
全ユング同士が、コミュニケーションを取れることを前提とした話だ。
「……あ」
愚かにも。ようやく、自分の提案が不可能であることを悟る灯志郎。
――そうだ、さっきアズが言っていたばかりじゃないか。
この世界の在り方は、テレビに等しく。
基本的に、そのチャンネルは変えることができない……つまり、お互いの世界を自由に行き来するなど、できはしないのだ。
「それに、実は……現在、いくつのユングが存在しているのか……それすらも、わからないです」
そんな状態で、全ユングに共通認識を作るなど、不可能と言わずしてなんと言おうか。
最初のコメントを投稿しよう!