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「つまり……現時点では、僕はアズに守ってもらうっていう選択肢以外ないわけだ」
最終的に辿り着いた結論に、思わずため息を吐いてしまう灯志郎。
しかし気を取り直して、彼は言う。
「それじゃあ、まあ……これからよろしく頼むよ、アズ」
その言葉に、何故か困惑の表情を浮かべるアズ。
「えと……随分あっさりですね、トーシロー……もっと、うじうじ悩むかと思ったですが」
彼女の予想としては、そもそも自分の話を信じてくれない場合と、信じてもらっても悪魔、あるいは女の子では護衛として不満、という展開になる可能性を考慮していたのだが……
しかし灯志郎は、何でもないような顔で。
「え?いやだって、アズが悪魔なのは見ればわかるから疑いようがないし……僕、っていうか世界の命を任されるくらいなんだから、強いんでしょ?」
なら、どこも不満はないじゃないか、などと言う灯志郎。
確かに理屈の上ではそうだが、だからといってそれを素直に受け入れられるかは別問題だ。
「トーシロー、お前……少し、どうかしてるです」
率直な感想を呟くと、灯志郎は何故か笑った。
自分が失礼なことを言った自覚があるだけに、どうして笑顔になるのかわからないアズ。
そんな疑問が顔に出ていたのか、灯志郎は殊更笑みを深めた。
「ああ、えっとね……さっきのアズと同じ事を、しきりに言う友達がいてね」
その子と少し重なって、可笑しかったんだよと、そんな事を言う灯志郎。
「…………?」
『どうかしてる』としきりに言ってくる相手を、何も思う事無く『友達』と呼べるなんてこと、可能なのだろうか?
やっぱりトーシローは、少し変です、と。
心の中で、密かに呟くアズなのだった……
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