第二章……『死亡時刻のお知らせ手紙1』

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――それから、しばらくした後。 灯志郎はリビングで、先程アズから聞いた事――主にユングと自分の関係全般について――を、涼音に説明していた。 「へぇ~!じゃあ志郎ちゃんが死ぬと、世界が壊れちゃうんだっ?」 目を白黒させて灯志郎の話を聞いている涼音は、その内容に驚きこそすれ疑うことはなかった。 ――これもまた、彼女が天然と呼ばれる所以なのだが。涼音は基本的に、人の言葉を必ず信じてしまう。 純粋無垢といえば聞こえは良いが、それはつまり、利用されやすい人間でもあるという事である。 涼音の性格故か、周囲の環境故か、あるいはその両方か……彼女は今まで、人の言葉を信じて、致命的な損害を被った事はない。 それはつまり……裏切られたときに彼女の精神状態がどのように動くのか、計り知れないという事でもある。 ――灯志郎を、事あるごとに『どうかしている』と称する某人曰く。 『夏雨灯志郎は致命的にどうかしているが、吹島涼音は壊滅的なまでに危ういな』、だとか。
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