第二章……『死亡時刻のお知らせ手紙1』

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「……と、ゆーわけです……理解したですか、トーシロー、スズネ?」 少しだけ不安そうな上目遣いで問い掛けてくるアズに、 「まあ、一応は……」 灯志郎は、曖昧な頷きを以てして答えた。 取り分けてアズの説明が下手というわけではないのだが、めぐるましく増える情報に処理が追い付かないイメージ。 いくら優れたコンピューターであっても、あまりに膨大な情報量を前にしてはフリーズせざるを得ないのと同じだ。 ともあれ、ゆっくりと情報を頭のなかで整理する。 ――つまり、穴を潜る(くぐる)ことでいろんな特殊能力が追加されて、その力の事を『フィルタ』と呼ぶ。 フィルタの中には、意思の疎通を可能にするものが存在する。 あれだけ長かった説明も、重要な所だけを抽出すればこうなる。 微妙な意味合いは損なわれるが、理解できているのだから構わないだろう。 ――ひとり納得した灯志郎は、質問した張本人に視線を向けて問い掛けた。 「涼音、ちゃんとわかったか……って、」 思わず、言葉を失う。 ――何だって、こんな、 「ん……すぅ、すぅ……」 質問した本人が寝息を立てているなんていう、ありえない事態になっているというのか。 ――さすがは吹島涼音。 極まった天然であり、異常なまでに掴みにくいテンポの持ち主という称号は、伊達じゃないのである。 ――いやまあ。 だからといって、尊敬にも称賛にも値しないのは、言うまでもないことではあるのだが。
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