1069人が本棚に入れています
本棚に追加
「……と、ゆーわけです……理解したですか、トーシロー、スズネ?」
少しだけ不安そうな上目遣いで問い掛けてくるアズに、
「まあ、一応は……」
灯志郎は、曖昧な頷きを以てして答えた。
取り分けてアズの説明が下手というわけではないのだが、めぐるましく増える情報に処理が追い付かないイメージ。
いくら優れたコンピューターであっても、あまりに膨大な情報量を前にしてはフリーズせざるを得ないのと同じだ。
ともあれ、ゆっくりと情報を頭のなかで整理する。
――つまり、穴を潜る(くぐる)ことでいろんな特殊能力が追加されて、その力の事を『フィルタ』と呼ぶ。
フィルタの中には、意思の疎通を可能にするものが存在する。
あれだけ長かった説明も、重要な所だけを抽出すればこうなる。
微妙な意味合いは損なわれるが、理解できているのだから構わないだろう。
――ひとり納得した灯志郎は、質問した張本人に視線を向けて問い掛けた。
「涼音、ちゃんとわかったか……って、」
思わず、言葉を失う。
――何だって、こんな、
「ん……すぅ、すぅ……」
質問した本人が寝息を立てているなんていう、ありえない事態になっているというのか。
――さすがは吹島涼音。
極まった天然であり、異常なまでに掴みにくいテンポの持ち主という称号は、伊達じゃないのである。
――いやまあ。
だからといって、尊敬にも称賛にも値しないのは、言うまでもないことではあるのだが。
最初のコメントを投稿しよう!