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――で、結局。
「ハァ……それで、キミはなんなのさ?」
紆余曲折ありはしたものの、最終的にはご馳走するハメになってしまった。
両親が仕事の都合で海外在住なので、事態がややこしくならなくなって助かる反面、身近に相談できる相手がいないという難点もある。
ともあれ、トーストを小動物よろしくカリカリやっていたアズは、灯志郎の言葉に顔を上げた。
口の周りにパンクズが付いているのが微笑ましい。
しかしながら、先程の超常現象を見てしまった灯志郎からすれば、アズは得体の知れないナニカなのだ。
正直、笑ってあげられる余裕はないのである。いやまあ、可愛いと思うことは否定できないのだが。
――閑話休題。
問い掛けられたアズは、言葉を選ぶように首を傾げて、しばらく迷ってから答えた。
「私は……トーシロー、お前達とは違う存在です」
「うん、まあ……」
むしろ、キミを人間だと解釈するほうが難しいと思う。
だってほら、普通の人間で銀髪に金色の瞳ってありえないし。
百歩譲ってそういう人種がいるとしても、人間は宙に浮きません。
にわかには信じがたい話ではあるが、何しろ自分の目で見てしまったのだ。疑う余地など有りはしまい。
――そんなわけで、灯志郎にとって重要なのは、
「――じゃあ、僕達人間と違うなら、キミはなんだっていうのさ」
人間じゃないのは、正直、初めて見た時からわかっていた。
そんな独特の空気を、彼女は纏っていた。
「――トーシロー……私のことは、アズと呼びなさいです」
何が気に入らないのか、不機嫌そうに眉をひそめてそんな事を口にするアズ。
不機嫌さを表すように、口調もより尊大なものに感じられる。
ともあれそんな前置きをした後、ようやく自分の正体を口にした。
「私は……トーシロー、お前達の言葉で言うところの……悪魔、というやつです」
「…………」
どうしよ、あたま痛い。
……そっかー、悪魔かー。
いやもう、今すぐ否定してやりたいのは山々なんだけど……そうだよなぁ、悪魔でもなきゃ、あんな不思議現象は起きないもんなぁ……
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