お小遣い

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一時間前………… キッチンで朝食の支度をする聖子。 冷蔵庫を開けて……… 「あら?こんなとこに鮭の切り身…?いつ買ったっけ?恐いから捨てようかしら…?あ!お父さんにお弁当作ればいいんじゃない!捨てるのもったいないし………」 聖子はそのアイディアにご満悦。 そして…貴仁が感動して受け取った弁当が出来上がったのだ。 貴仁は何も知らずに、喜々として弁当を鞄に入れ会社に向かう。 …弁当かぁ。これで帰りに生ビールが飲めるな… 鼻唄なんか出ちゃったりして… 貴仁のお小遣いは一日たったの500円。 タバコを買ったら残りは微々たるものだ。 故に…禁煙した! 「健康的でいいんじゃない?」 と妻に言われた。 まぁ…健康的なんだが… タバコを理由に小遣いの値上げを期待した俺の意見は……あっさり却下され、相変わらず500円。 考えてもみてください! 今時、外に出れば金がかかるんです! 昼食は、最低でも300円はかかります。 残りは200円……! 喫茶店のコーヒーも飲めやしない! せいぜい自動販売機のコーヒーがいいとこ…。 営業で歩き廻って…疲れても、寒いベンチで缶コーヒー。 虚しいですよ……… でも…家族の生活を守る為、頑張れ!俺。 住宅ローンがあって妻もやり繰り大変なんだから俺も協力しなくちゃ! 俺の楽しみは毎日、残る小銭の貯金…! それから、物凄く稀に帰りに飲むビール! これがあれば生きて行けるって実感できる味だね 貯金は少しずつ貯まって豚の貯金箱が重くなってきた…! いっぱい貯まったら…前から行ってみたかった帰り道にある寿司屋で一杯かな…? …ハハハ…夢だな……… 寿司屋が夢なんて…小さいな…俺。 とか、考えているうちに昼か……… そうだ!弁当!!! 机の上の書類を片付けて弁当を置いた。 「係長、今日は愛妻弁当ですか~?」 部下に冷やかされた。 曖昧な笑顔で流し、弁当の蓋を………… ……うッ! 変な匂い…? 恐る恐る蓋を開いた。 異様な匂いが辺りに漂う いやいや…ホラーじゃないんだから……… 俺は弁当を見てア然とした。
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