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─歩く速さが変われば、見える景色も変わる─
私たちは‥旅人。
歩いてきた道には、歩幅が違う二つの足跡が残る。多少の遠回りも道草もしたけど‥私たちは"歩いた道"をそれぞれ記憶し、それをしっかりと描きためてきた。後悔もないし、やってきた事には誇りを持っている。
私の隣には"彼"がいて、いつも私に微笑みかける。ここ数日、砂浜の上を歩いていた。それも今日で終わるだろう。"町"が見え始めているのだから。
『さっき話していたのは‥誰?』
私は少しムッとしながら‥
「ヤドカリ。でも‥なんか駄目だった。」
群れから離れたヤドカリは、自分の貝が奏でる音に酔いしれていた。きっとその音は、本当に素晴らしいんだろう。でも新しい貝を見つける努力をしない、ヤドカリは駄目だ。
自分の力を過信する者は、一度挫折を味わわないと‥次には進めない。
‥以前の私がそうであったように。
"彼"はそんな愚痴も聞いてくれる。だから私は幸せだ。
一人の旅も満喫はしていた。休みたくなったら休んでいたのだし、歩く速さにも気なんか使わなくて良かったのだから。
小さなリュックを眺めながら‥次の町を目指す。
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