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「おはよう!」
いきなりぱちりと目を開けて、普段からは想像出来ないくらい明るい声で目覚めの挨拶を言う。
見開かれたアッシュブルーの瞳には普段の不機嫌の影もない。
俺の腰を抱く力は信じられないくらいに強くなって、千切れそうだ。
流石家族一の怪力。
「依織兄ー! 痛いから痛いから!」
俺が本気で涙目になって痛みを訴えると、今のテンションは寝ぼけていたものかのようにハッと覚醒し、いつものふざけた兄に戻る。
「ったく、織……俺の眠り妨げんなよ」
パッ、っと腕を外されると、幾分か楽になる。
口では文句言ってるけど、この起こし方をすると目覚めがいいから八つ当たりされないんだ。
「依織兄こそ、なんで俺の布団で寝てんだよ」
しかも、抱き付きながら。 俺は早々にベッドから降りてしまうと、クローゼットを漁って今日着る服を物色し始めた。
一方の依織兄はまだ布団の上を陣取る。
早く布団整えたいのに。
「人肌が恋しかったんだよ。織にはねえのかそんな日……」
「ない」
即答で返すと、布団直しはもう諦めて俺は部屋を出た。
すると後ろから素早い事に依織兄が追いかけて来て、むしろ抜かして洗面所に入って行った。
しまった……
俺も使おうと思った場所を先にとられたから、とりあえず先にトイレを済まして、リビングのカーテンを開ける事にした。
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