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ここウタリモラという国の僻地、ゴルサという村は農業が盛んである。
村中の人々が、自給自足で賄える程だ。
格差も無く、衣類は麻、靴とベストは革というのがスタンダード。
住まいは、ほとんどが木造である。
そんな村に、ヴォルティスに憧れる少年がいた。
「ヒー君? ちょっと来て。お手伝いをして頂戴」
「はーい。ママ、何?」
「お使いに行ってきて欲しいなぁ」
「一人で? 嫌だよ。だって恐いんだもん」
「そんなことじゃ、憧れのヴォルティスになれないわよ? パパのナイフを持って行って良いから。ね? お願い。 ヒカレノ・インサーギの名前を、世界に馳せるんでしょ? 頑張らなきゃ」
「ヴォルティスには、まだなれないんだよ。もう少し大きくなったらきっとなれると思うけど。 でも、パパのナイフがあるなら、行っても良いかな? ……うん。僕、行くよ!」
「ありがとう。助かるわ」
パパのナイフは凄いんだ。
魔石っていう石が埋めてあって、持っているだけで勇気をくれるんだ! 僕は大切にポケットに入れたパパのナイフを、ズボンの上から叩いた。
もちろん、カバーがついている。
これでもう大丈夫。
いつも、僕だけに向かって吠えてくる犬も、恐くないし、川に落ちるんじゃないかって心配もしなくて良いんだ。
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