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最近、ドュッセの村では雪が観測された。
しかも毎晩のように雪が降り積もり、今では屋根の雪下ろしをしなければ家が潰れてしまうほどの大雪である。
既に死者は三人、怪我人は両手では足らないほどの被害が出ていた。
人々はあまりのことに青ざめるばかりで、雪かき以外の対応策を打ち出せない。
なぜなら、この村には人の記録に残る限り、雪が降ったことがなかったからである。
大陸でも雪が降るのは、最北端にある国スウォル周辺くらいで、村の人は雪など見たこともなかった。流れてきた旅人から話に聞いたことがある程度である。
季節は乾期。
本来ならば焼け付くような日が照りつけ、緑が青々と茂り、動物と虫が活発になる季節。
誰もが予想にしていなかった異常気象だけではなく、なぜか人が村を出られなくなっていた。
隣町に救助を求めるべく出かけた村人が、首を傾げながら帰ってきたのだった。
その若者によると、雪が途切れた辺りから先は真夏なのだが、どうしてもその先に進めないらしい。
壁に阻まれるのではなく、足が地面に貼りついたように動かなくなってしまうのだという。
その逆もまた同じで、どうしても雪の積もった所には入れない。
雪は何もかもを覆い隠していく。
全ての命を巻きこんで。
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