赤い夜は永く

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したったらずな声で、夏葵は自分の身の上話を私に語った。 彼氏の作った借金が700万近くあること。自身の借金ま120万に昇ること。 家賃を半年近く滞納していること。 家族に縁を切られたこと。 「ごめんね、初対面なのに重い話しちゃってっえへへ」 何故この子は笑うのだろう? 辛いはずの過去をニコニコと話すのだろう? 「お互い頑張ろーね!」 …誰かにこんな風に言われたのは初めてだ。 あたしはむず痒いような切ないような泣きたい気持ちになってしまった。 その時、待機部屋の扉が開いて ドレスに着替えた美咲婆さんが部屋に入ってきた。 明るい巻き髪、付け睫毛、ピンクのチーク、 それが婆さんの定番スタイル。 今日はピンクのベビードールみたいなドレス… 婆さんのくせに… 吐き気がする。 「おはようございます。」 「あっお、おはようございますっ」 あたしに続いて夏葵は吃りながら挨拶をする。 夏葵婆さんはにこぉっと営業スマイルで夏葵に返事をする。 「おはよぉ~☆」 そのままさらさらと此方に歩いて来てあたしに言う。 「邪魔」 私はすみませんと謝り、また部屋の隅に追いやられた。。 「あっあの…」 夏葵が婆さんに声をかける。 もしかしてあたしの事をかばってくれるのかな? 期待したあたしが馬鹿だった。 「今日から働く事になりました、な、夏葵です!よろしくお願いぃいたしますぅ…っっ」 ガバっと夏葵はまた三指をつく。 「美咲よ、よろしくね~♪」 にこぉっとヘビの様な婆さんの微笑み。 「美咲さん…。すごい可愛いです…私自信無くなってきちゃいました…」 「えぇ~!夏葵ちゃんだって若いじゃない!」 「私なんて…美咲さんみたいに華もないしスタイル良くないし…」 …コイツ世渡り上手だな。 「お化粧と髪型変えると随分雰囲気変わると思うよ~?」 「でもお化粧とかよくわかんないんですぅ…」 「じゃあちょっとこっち向いてぇ、美咲流のメイクだけど~」 婆さんは得意気に夏葵のメイクを直し始めた。 …夏葵は婆さんの軍門にくだったな。 あたしは、本日二度目の小さなジェラシーを感じながら二人のやり取りに耳を傾けた。 誰の下につくか、 それによって今後この城での生活が決まる。 女の世界とは、真に恐ろしいのなのだ。 夏葵のヘアメイクが完成する頃には、 待機室に本日のキャスト7人が全員集合していた。
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