走る!②

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 普通に法規通り走って休憩をしながら移動するなら、100%鉄道の方が速い。公道において超長距離の平均速度は、一般道で40km/h、高速道路で70km/h程度に落ち着いてしまうだろう。  岡山~青森間は新潟経由で約1350km、東京経由で約1700kmの距離があるので、仮眠時間を加味するとそれだけでまる一日が必要になってしまう。  そして、新潟~青森間の約550kmには高速道路が整備されていない(当時)。  距離の問題は体力の問題でもある。人間の集中力はせいぜい一時間程度しか保てない。プロが走る耐久レースでも一時間を目安に交代する程である。250km/hを超える速度を公道で何時間も継続する事は余りに危険なので、100%の集中力を必要とする走行は、極力短時間に留めなくてはならない。  そして燃費の問題もある。大型二輪車で低速サーキットを走ると7km/l程度しか走れない。耐久レースのように、常にピットでクイックチャージャーが待ってるわけではないので、平均200km/h超で走って、100km、30分毎にスローダウンしてスタンドを探し、5分間停止するのは効率が悪い。夜間の7号線、8号線では、給油に困窮してしまうだろう。  そしてもう一つ、警察の問題がある。余りに目立つ行為を継続すると、仲間を呼んで待ち伏せされる。  Nシステムや取締重点地区ではスローダウンし、まわりの車両にも常に注意を払う必要がある。  そんな過去の経験から法定速度(若しくは安全速度)×2で走り続けると、一般道で90km/h、高速道路(当時の二輪車の制限速度は80km/h)で140km/hを平均でマークし、且つ、200km以上を無給油で走行でき、不意の状況変化や警察にも対処できるようになる。  これは計算上、青森までは12時間を切る走行だろう。  帰省時なら、大都市や一般道を深夜に通過し、フェリーに効率よく乗れるように出発時間を調整するのだが、今回は前進あるのみの行き当たりばったり。給油の心配の無い高速道路区間のペースも少し上げられる。  そしてバイト先の運送屋で仕入れた、チャイナ~名神~北陸の情報も役に立つに違いない。  シミュレーションが終わると俺はタンクバッグに小銭と濡れタオルを放り混み、レザースーツを着込んでイヤープラグを耳に入れた。
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