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「それでコイツは『こっちにデイジーがいる! 俺が言うから間違いないんだぁ!』とか言ってさ。全部違ったよな? 頭に来たから敵が目の前にいる時に『あっ! デイジーだ!』って言ったら振り向きやがんの。5メートルは吹っ飛んだよな?」
「何言ってるのよ。私にマジックパワーを無駄使いさせておいて!」
「アタシは大爆笑! あのヘタレっぷりには涙が出たわよ!」
楽しかった。私の知らない色んな話が聞けて。そして、嬉しさから来るのか、体の真ん中の芯が締め付けられた感じだった。
「酷い扱いですね。勇者様なのに」
私は右手の人差し指で涙を拭いながら笑って言った。
しかし、その和やかな雰囲気は長くは続かなかった。
「あれ? ん? 勇者? ねぇ、ちょっと! 私のヒール効いてる!?」
私は鳥肌が立った。
「ダメなの? アレじゃない!? こんな時はキスよ! アタシはそう習ったわ!」
「そうだな。愛する人の接吻だ」
「何よりも愛は強いのよ! 私のヒールよりも! デイジー早く!」
キス? 習うの? えぇっ!?
でも迷っている時間は無い。
私は勇者様にキスをした。
死なないで。
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