決戦

7/8
前へ
/23ページ
次へ
「それでコイツは『こっちにデイジーがいる! 俺が言うから間違いないんだぁ!』とか言ってさ。全部違ったよな? 頭に来たから敵が目の前にいる時に『あっ! デイジーだ!』って言ったら振り向きやがんの。5メートルは吹っ飛んだよな?」 「何言ってるのよ。私にマジックパワーを無駄使いさせておいて!」 「アタシは大爆笑! あのヘタレっぷりには涙が出たわよ!」  楽しかった。私の知らない色んな話が聞けて。そして、嬉しさから来るのか、体の真ん中の芯が締め付けられた感じだった。 「酷い扱いですね。勇者様なのに」  私は右手の人差し指で涙を拭いながら笑って言った。  しかし、その和やかな雰囲気は長くは続かなかった。 「あれ? ん? 勇者? ねぇ、ちょっと! 私のヒール効いてる!?」  私は鳥肌が立った。 「ダメなの? アレじゃない!? こんな時はキスよ! アタシはそう習ったわ!」 「そうだな。愛する人の接吻だ」 「何よりも愛は強いのよ! 私のヒールよりも! デイジー早く!」  キス? 習うの? えぇっ!?  でも迷っている時間は無い。  私は勇者様にキスをした。  死なないで。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加