依頼⑦~魔女とクロネコ~

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貫く殺気。 周囲の空気がチリチリと音を立て、焼け付くような感覚に襲われる。 覚束ない足どりで教卓にしがみつき、教科書や資料集をかき集めると、マルオは何も言わずに慌ただしく教室を出て行った。 よほどの熱気だったのか。 生徒が一人、エアコンを作動させた音が静かに響く。 「…………オレンジ、うるさい。」 「……何か言った?フウ君」 「…………気安くフウ君って呼ばないで。」 やや離れた席から響いた凜とした声。 せっかくマルオが退散したことで平穏な教室に戻ったというのに、早くもフウリンとフェイトの間でバトルが勃発しかけている。 この二人が戦おうものなら、被害は黒板だけじゃ済まされないだろう。 「…………ライに、近付かないで。」 「……は?」 「…………オレンジのために言ってるんじゃない。ライが、可哀相だから。だからケーコクしてるだけ。」 「……なにそのまどろっこしい言い方。オレがライに近付くのが気にくわないだけでしょ?」 「…………違う。ライが悲しむから。」 「オレと会うとライが悲しむ?ふーん……どういう嫌味なわけ?それ」 「…………オレンジが、“使徒”に協力するなら、だいじょーぶ。」 「……“使徒”?」 「…………でももし、協力しないんだったら……ライには絶対、近付かないで。」 「…………。」 早く授業が終わったということで、教室内には再び活気が満ち始める。 液体化した黒板を見て事務室に連絡しに行く者。 次の授業に備えて準備をする者。 昨日のテレビの話題で盛り上がっている者……。 その騒がしさの中で、不思議とフウリンの小さな声がハッキリと聞こえてくる。 睨み合うようにして対峙する二人を、グレンとシドはただ見守っているしかない。 「……今日中にライと連絡がつかなかったら、明日ライに会いに行く。“使徒”だか何だか知らないけど、オレには関係ないし協力する気もない」 「…………。」 「ライを悲しませたりなんかもしない。絶対に守るって約束したから」 「…………。」 「……ってなわけで、グレンちゃんもシドっちもまたね♪」 「おい変態オレンジ、人の教室の黒板を破壊しといてそれだけか?」 「……後は任せた!」 「うおい!逃げる気かよ!フェイト先輩!」
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