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「事故った3年生ってカリム先輩なんだってよ!」
「ハァ!?あの陰湿眼鏡が?」
「カリム……先輩が?」
ホームルーム終了後の休み時間。
早くも廊下や教室では、桜高生が交通事故に巻き込まれたらしいという噂で持ち切りとなっていた。
そしてシドの集めてきた情報によると、その学生というのはカリムなのだという。
それにはグレンもライも顔を見合わせ、訝しげな表情を浮かべている。
「あの……シド、その話って……本当?」
「本当だって!ゴウキ先輩にも直接確認しに行ったし」
「……本当に……事故が原因?」
「ゴウキ先輩はトラックに撥ねられたって言ってたぜ。てかそんなこと嘘ついてどうすんだよ?」
「……う、うん……ごめん……」
何やら浮かない顔をしたまま変な質問をしてきたライに、今度はシドが訝しげな顔を向ける。
するとライは俯いたまま、意味もなく自分の机へと視線を落とした。
……何かネガティブなことを考え込んでいるらしいのは、表情を見ればわかる。
「(カリム先輩……何かあったんじゃ……)」
ワイシャツの袖をギュッと握りしめると、ライの頭の中に昨日の出来事が蘇る。
……結局あの後、部室のシャワーを借りてジャージに着替えたものの、授業に出る気は起きなかった。
そのまま1限の途中まで部室で過ごし、教室に戻ることなく学生寮へと帰ってしまったのだ。
当然、フェイトからの連絡はあれから無視し続けている。
「ライ、そういや昨日……フェイト先輩が教室に来たけど」
「……え?」
「授業中に入って来てさ、『ライを拉致りに来た』とか意味わかんねーこと言ってたぜ?」
「…………。」
「そんで、連絡がつかなかったらライに会いに行くとか言ってたから……今日あたりまた授業中に来るんじゃねーか?」
少しでもライに元気になってもらおうと、そう思って言ったことだった。
だが、それを言った瞬間……ライの表情が強張ったのを、シドとグレンは見逃さなかった。
明らかに様子がおかしい。
「……おい、変態オレンジと何かあったのか?」
「…………ごめん、オレ……帰る」
「……は?」
「フェイト先輩には……会いたくない」
「……テメェが会いたくなくてもアイツは会いに来るだろーが。そうやってコソコソしてるうちはな」
「だってオレは!……これ以上……先輩に……迷惑かけたくない……」
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