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息を切らせながらもリンリを睨みつけるフェイト。
ここまで必死に身体を引きずってきたのか、腕や頬には所々擦り傷のようなものがある。
「……ライ……は……行かせ…………ない……!」
地に伏しているものの、闘志を見せるフェイトの姿に、リンリは何か面白いものを見つけたかのようにフェイトを一瞥(いちべつ)した。
……嫌な、予感。
変な胸騒ぎがする。
ライから手を離し、立ち上がってフェイトを見下ろすリンリの瞳に、ライの心が妙にざわつき始めた。
「……リン――」
「坊や、アンタ面白いじゃないか。どっからそんな力が湧いてくるんだい?」
「……ライ……を……傷つ……け…………許さ……ない……」
「……ふーん、そうかい。でもね、アタシはそこまで坊やが必死になると……
坊やのその目、まだ闘う気満々って顔。その顔が崩れる瞬間、見てみたいって思っちまうじゃないか」
「――ぐあっ!!」
「っ!先ぱ――」
リンリの左足がフェイトの頭を容赦なく蹴り飛ばした。
その衝撃で地面に転がったフェイトの身体を、リンリは執拗(しつよう)に攻撃し続ける。
助けようと起き上がりかけたライだが、途端にリンリの攻撃は止み、魔女はこちらを振り返った。
「……クロ、手出ししたらこの坊やの命はないよ」
右手の大剣を振りかざし、フェイトの首筋に宛てがうリンリ。
……こうされては、動きようがなかった。
拳をきつく握りしめ、睨みつければ、リンリは不適な笑みを浮かべながらフェイトに向き直る。
倒れているフェイトの胸倉を掴んでやると、フェイトの鋭い視線と目が合った。
「……どうだい?もうクロと関わる気は無いって約束できるかい?」
「……ふざけ……な…………だ……れが……うぐっ!!」
フェイトの腹部に厚底の下駄が勢いよくめり込む。
咳込むフェイトの口から血が噴き出し、もう限界らしいのが端から見ていてもわかった。
……自分の、せいだ。
フェイトと連絡を取っておけば、こんなことにはならなかった。
フェイトが追い掛けてくることもなかった。
込み上げる罪悪感に、ライは足元から崩れ落ちる。
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