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……もっと、
もっと自分が、強かったら……。
「……強情な坊やだね。じゃあ……
その覚悟がどんなもんか、見せてもらおうか」
一旦フェイトから離れたリンリが塀から引き抜いたのはフェイトの小太刀。
今度は大剣を地面に放り、右手で小太刀を手にすると、再び左手でフェイトの胸倉を掴みあげる。
そしてその刃を宛てがったのは、フェイトの顔――
フェイトの、右目。
「……もう一回聞くよ。
坊や、クロとはもう関わらないって約束できるかい?」
「…………。」
ギラつく刃。
不気味な光を宿す小太刀は、フェイトの眼前に突き付けられる。
……答えによっては、どういう仕打ちを受けるのか。
この女の目を見れば、容易に想像がつく。
「言っとくけど、情けなんてかけてやらないよ。坊やがこっちの約束に従えないっていうんなら……
まずはその、生意気そうな右目からいただこうかね」
文字通り、“目の前”にちらつく銀色。
痛む身体とこの体力では、逃げられないのはわかっていた。
傷だらけの顔を上げ、フェイトの口がゆっくりと開かれる。
「……オレ……は…………
――ライを……守……るって……約……束……した。
だか……ら……
……おま……えと……そ……んな……約……束……する……くらい……なら……
こ……んな……
こんな……右目なん……て……
――くれてやる……!!」
「……そうかい。じゃ、遠慮せず貰っとくよ」
「フェイト先輩……!!!」
左肩の痛みなんて忘れて、無我夢中でリンリの刃を持つ手に飛び掛かった。
そんなライの攻撃を軽く振り払うと、リンリの右足が勢いよくライの鳩尾(みぞおち)を捉える。
その衝撃で地面に吹き飛ばされたものの、すぐさま受け身をとり、体勢を立て直そうとしたところで……
――耳をつんざくような、フェイトの悲鳴。
そして魔女の笑い声が、
ライの両耳に、こだました。
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