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次の日、朝一番にカーテンを開けると、小雨がぱらぱらと降っていた。
やっぱ無理だったか。
俺は母親に見つかる前に昨日吊したてるてる坊主を回収してごみ箱に捨てた。
見つかったら、まだまだ子供だねぇと笑われるに違いない。
朝食にパンと目玉焼きを食べて、「行ってきます」とまだ降りしきる雨の中、バイクを飛ばした。
文化祭が始まるまでに止めばいいんだけどな。
暗い雲は俺の心を鬱蒼とさせる。
9時の文化祭開催時にはさっきまでの雨が嘘のように止んでいた。
まだ地面にぬかるみはあるものの、花火を上げるのには問題ない。
あのてるてる坊主が効いたかな、と内心嬉しく思った。
「おはよう」
ぽんと俺の肩を叩き、奈美が笑いながら話してきた。
「晴れてよかったね」
「そうだな、一時はどうなるかってマジで不安だったけど」
「私もだよ~」
「でもなんとか打ち上げられるみたいだし、みんなで作った甲斐があったよな」
「うん、花火なんて普通の人じゃ一生作らないと思うもん」
端から見ればたわいもない会話なのだろうが、俺にとっては一番心が休まる瞬間だ。
「朝から熱いね~、お二人さん」
「ち、違っ…!そんなんじゃないんだから!!」
パシャパシャと写真を撮りながら冷やかして来た新聞部の部長に半ば呆れながら、思い切り否定されたことが少しだけ虚しくなった。
やっぱり気持ちを伝えなくてよかったとか、一体どれだけチキンなんだよ、俺は。
今日は文化祭だから、新聞部の彼女は一日中写真撮ってるんだろう。
後でさっきの2ショット写真を貰おうかとも考えたけど、それをネタにされたらと思うと、一瞬にしてそれは却下された。
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