月明かり

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そう見えてたんなら心配して「どうした?」とか声かけてくれればいいのに、いきなり「"別れよう"」か…。 そういう人だったんだ。 しかも"またな"って言っても会う気ないくせに。 まぁ、どうせ違う女でも見つけたんだろうけど。   そうしている内に心の底からジワジワ滲み出る量が少しずつ増し、そして爆発した。   私が私でなくなってしまった気がした。 いや、私じゃなくなったのだ。 私は玄関に立て掛けてあったバットを持って彼、いやアイツの後を追った。 歩くのが遅いのかすぐに姿を見つけることができた。   周りに人影はない。 今は真夜中だし、ここは滅多に人が通らないからだ。 私は気配を消してアイツに近付き、バットを大きく振りかぶってそれをアイツの頭に――。     ヒュン―――。   思ったより軽い音がでた。   ガンッ!!   瞬間、アイツが地面に崩れた。 私は存分にアイツを殴り、存分に返り血を浴びてやった。   腕が疲れるまでひたすら休まず殴り続けた。 周りから見たらなんとも狂気だっただろう。だが周りに人影はない。   そして、アイツは呻かず、動かなくなった。
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