月明かり

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カランカラン―――。   私はバットを持つことが出来ないくらい殴った。 動かなくなったアイツを見たら、   「あぁ、やっぱり私は私でなくなったんだ……」   そう思いつつ空を仰ぐ。 闇の中にポツンと月が浮かんでいた。   月はすごい。 この世界が闇に覆われながらも私達を照らしてくれる。 あたかも月を中心にこの世界が回っているかのように。   私はつかみ取ろうと月に手を伸ばす。 だが当然届くはずもなく宙をさ迷う。 その手が月明かりによって朱く反射する。   「あは、あはははは……」   渇いた笑い声が空に消える。   「あはは、私壊れちゃったね。そっか、壊れちゃったんだ」   「あぁ――。私もあの月のように輝きたかったなぁ……」   頬を伝う一粒の滴が月明かりに照らされ、幻想的な光を放つ。   「そっか、私これからこうやって生きていかなきゃならないのか……」   「どうして壊れちゃったんだろ……。あははは――」   悲しみなんてないのに。 笑うことしかできないのに。 なんで涙が溢れるの……? ねぇ……?     そうして私は歩み始めた。 私にはもうこうやって生きるしかないから。 私は一度振り返り、アイツに言った。   「今までありがと。殺しちゃってごめんね?そしてさよなら――。」
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