赤鬼現る

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――時は戦国―― 物々しい甲冑を身に付けた人々が辺り一面に突っ伏し、どす黒い汚濁の朱を地に与えている。 弱肉強食の世界は全国で戦鐘をけたたましく鳴り響かせ、群雄割拠は今尚続き、北にあるこの地にも戦乱の波が押し寄せ、強者共が敵を討ち滅ぼさんと入り乱れ戦を繰り広げている。 その戦場に赤い鬼がいた。 いや、鬼と言うのは比喩であり人ではあるが。 生まれつき持って生まれたであろうと分かる綺麗な灼熱の炎を彷彿させる赤い髪と瞳。 黒髪黒瞳が常識であるこの国ではまずありえない色だ。 ニメートルはある身長に筋肉隆々の逞しい体。 端正な顔立ちではあるが目は鋭く、何もしていなくとも見る者を威圧する。 髪も、顔も、体も、身につけている鎧も赤い血の雨を浴び真っ赤に、または赤黒く染まっていた。 彼の者もまた己の力のみが全ての世界に生きる強者の一人である。
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