596人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
―――
――――
―――――
ポツポツと雨が降り出す。
(……ん?)
赤鬼は頬に落ちてきた雨粒に気付き目を覚ました。
「疲れたからそのまま寝てしまったんだったな……」
小さな傷はあちこちにあるが特に大きな傷があるわけでもない。
赤鬼は再び大の字で数え切れないほどの屍の山の中を一人寝転がりながら空を見上げた。
「……負けたな」
赤鬼側の隊は大将の首を取られた為敗北が決まり敵陣は引き返していった。味方もこれ以上の戦いは無意味であると判断し退却していった。
(最初から数で負けてたんだ。俺一人ができることなんて知れている。所詮金で雇われた身、命を捨ててまで敵討ちする気もないし、特に悔しくもないがな……ん?)
冷たい雨が本格的に降り始めたかと思うと雪に変わる。
「ふっ、雪か。雪は良いものよな……嫌なもの全てを埋め尽くしてくれる。俺の心も……」
雪は強さを増し辺りに降り注がれてゆく。
(これで月が見えれば文句はないんだが……)
戦場の成れの果てと雪を眺めながら呟く。
「酒が飲みたいものだ……ふふ、雪と屍共が肴というのも風流よな」
雪は降り続ける戦場を白く染め上げまるで兵士達の墓場であるかのように降り積もる。
「そろそろ行くとするか……」
すくっと立ち上がりその場で死者達に黙祷を捧げる。
「さて、次の仕事は――――」
赤鬼は歩き去り次の目的地へ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!